インフラエンジニアは、企業やサービスの基盤を支える重要なポジションです。ネットワークとサーバーはそのインフラ技術の中心を成す要素であり、これらを正しく理解することで安定したシステム運用が可能になります。本記事では、未経験の方でも押さえておきたいネットワーク、サーバーの基本知識を、ルーターやスイッチなどの機器構成からサーバーOS選定のポイント、さらに現場でよくある運用構成例までわかりやすく解説します。今後の学習の指針として、ぜひ参考にしてください。
インフラエンジニアに求められる技術とは
インフラエンジニアは、サーバーやネットワークをはじめとするIT基盤全般の設計・構築・運用・保守を担当します。私自身、15年以上のインフラSE経験から、以下の領域を総合的に理解しておくと仕事の幅が格段に広がると感じています。
- ネットワーク:LAN/WAN、ルーター、スイッチ、ファイアウォールなど
- サーバーOS:Linux、Windows Serverなど
- 仮想化技術:VMware、Hyper-V、Docker、Kubernetesなど
- クラウド技術:AWS、Azure、GCPなど
- 監視ツール:Zabbix、Nagios、Datadogなど
まずはネットワークとサーバーの基礎をしっかり固め、その上で仮想化やクラウドへと理解を広げるのが王道の学習ステップです。
ネットワーク機器の役割と基本用語
システムはネットワークによって複数のシステムを相互接続し通信を行います。ネットワークが不要なシステムは存在しないと言っても過言ではありません。ここでは代表的なネットワーク機器と、初心者が押さえておきたい関連用語を簡単にまとめます。
LANとWAN
- LAN(Local Area Network)
オフィスや家庭内など、地理的に限定された範囲で構築されるネットワークを指します。基本的には小規模かつ高速通信が行われやすいのが特徴です。 - WAN(Wide Area Network)
専用線やインターネット回線などを用いて離れた拠点同士をつなぐ広域ネットワークです。企業の複数拠点間をつなぐケースなどでよく利用されます。
ルーター
- 役割
異なるネットワーク同士を接続し、最適な経路(ルート)でパケットを転送する機器です。 - 初心者が押さえておきたいポイント
OSPF、BGPなどのルーティングプロトコルを知っておくと、ネットワーク全体の構造を把握する際に役立ちます。
スイッチ
- 役割
同じネットワーク内の端末間の通信を中継し、必要な宛先にのみパケットを送る機器です。 - 初心者が押さえておきたいポイント
VLANを利用してネットワークを仮想的に分割すれば、セキュリティやパフォーマンスを向上できます。
サーバーOSの種類と特徴
ネットワークと並んで重要なのがサーバーOSの知識です。サーバーは、データやアプリケーションを提供する“土台”であり、多くの場合LinuxかWindows Serverが利用されています。
Linux系OS
- 特徴
オープンソースで自由度が高く、安定した稼働を実現しやすい点が強みです。Red Hat Enterprise Linux、CentOS、Ubuntu Serverなど多彩なディストリビューションが存在します。 - 初心者が押さえておきたいポイント
- SSHによるコマンドライン操作
yum
やapt
などのパッケージ管理- /var/log/配下のログを確認・解析する習慣をつける
Windows Server
- 特徴
GUI(グラフィカルユーザーインターフェイス)が充実し、Active Directoryなどの機能でユーザー管理を一元化しやすいのが特長です。 - 初心者が押さえておきたいポイント
- GUIだけでなくPowerShellを使ったスクリプト管理
- IIS(Webサーバー)の基本的な設定や運用方法
- Active Directoryドメイン環境の導入と運用
仮想化・クラウドの基礎
近年はオンプレミス(自社保有サーバー)だけでなく、仮想化技術やクラウドサービスを活用した構築が主流になりつつあります。
- 仮想化
1台の物理サーバー上で複数の仮想マシン(VM)を稼働させる技術です。VMware ESXiやHyper-Vといったハイパーバイザー型だけでなく、DockerやKubernetesなどのコンテナ技術も注目を集めています。 - クラウド
AWS、Azure、GCPなどのパブリッククラウドを利用することで、物理サーバーを購入・管理せずにインフラを立ち上げられます。ただし、クラウド特有のネットワーク設定やセキュリティポリシーの考慮が必要です。
実際に使われることの多い構成例
オンプレミス構成
- 特徴
自社やデータセンターに物理サーバーを設置し、ネットワーク機器も含めて自社で管理するスタイルです。カスタマイズの自由度が高い一方、導入コストや運用コストがかさみがち。昨今はクラウドの導入が進んでいますが、オンプレミス主体の企業も多く存在します。 - 用途例
- 社内基幹システム(ファイルサーバーや基幹系業務アプリなど)
- レガシーアプリケーションの運用
クラウド併用(ハイブリッド)構成
- 特徴
オンプレミスで基幹系を動かし、開発やWebサービスはクラウドに任せるといったハイブリッド運用が増えています。 - メリット
- スケーラビリティ:負荷が増えた際にクラウドのリソースを柔軟に追加
- コスト最適化:必要に応じてリソースを増減し、無駄を削減
クラウドネイティブ構成
- 特徴
システムのすべてをクラウド上で完結させる構成です。サーバーレスやコンテナ、マイクロサービスなどの技術をフル活用し、物理サーバーを一切持たないケースもあります。 - メリット
- インフラの導入・拡張が圧倒的に素早い
- サーバーレス(FaaS)やマネージドサービスにより、運用負荷を最小限にできる
- グローバル展開やオートスケーリングが容易
補足
クラウドネイティブ構成では、CI/CDパイプラインを整備してアプリケーションのデプロイを自動化したり、IaC(Infrastructure as Code)によってインフラ環境をコードベースで管理する企業も増えています。高いアジリティを求めるプロジェクトでは特に有効なアプローチです。
今後の学習ステップ
- セキュリティ
ファイアウォール、IDS/IPS、VPNなどを理解し、システムを安全に運用する知識を身につける。 - 監視・運用自動化
ZabbixやNagiosなどの監視ツールの活用、AnsibleやTerraformなどの構成管理ツールを使った運用自動化を検討する。 - 高可用性・冗長化
障害発生時の被害を最小限に抑えるため、ネットワークやサーバーを冗長化し、クラスタリング技術を導入する。 - クラウドネイティブ技術
DockerやKubernetesなどのコンテナ技術、クラウド各社のサービス(AWS、Azure、GCP)を深く学ぶ。
まとめ・結論
本記事では、インフラエンジニアが押さえておくべきネットワーク機器(ルーター、スイッチ)とサーバーOS(Linux、Windows Server)の基礎、仮想化・クラウドの概要、そして代表的な構成例を紹介しました。インフラエンジニアとしてキャリアを積むうえで、物理機器やOSの仕組みを理解していれば、トラブルシューティングや最適化もスムーズに行えます。
まずはネットワークとサーバーの基本を確実に押さえつつ、仮想化やクラウド、セキュリティなど関連領域へ学習範囲を広げることで、よりモダンで強固なインフラ構築を担えるようになるでしょう。
次アクション
- 公式ドキュメントをチェック
- オンライン学習サイトの活用
- 資格試験の検討
- LPIC(Linux知識を体系的に学ぶ)
- CCNA(ネットワークの基礎を網羅)
- AWS Certified Solutions Architect(AWSの設計・運用スキル)
- Microsoft Certified: Azure Administrator Associate(Azureの運用管理を習得)
- Google Cloud Certified – Associate Cloud Engineer(GCPの基本運用を学ぶ)
- コミュニティ・勉強会への参加
- OSSコミュニティや各種カンファレンスで最新技術をキャッチアップ
- 実務者同士の交流や他社事例の共有を通じて知見を深める
小さな検証環境を構築してみる、クラウドの無料枠を利用して触ってみるなど、手を動かしながら学習を重ねることで、インフラエンジニアとしてのスキルを着実に伸ばしていくことができます。ぜひ一歩ずつステップアップを目指しましょう。
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